グローバル放送局の目でスポーツを見る

MPP Global Wednesday, 11 April 2018

先月MPP Globalは、世界のスポーツメディアとOTT業界において最も影響力のあるビジネス会議、スポーテル・モナコに出展しました。

主に学んだこと

  • OTTのサブスクリプションモデルはダイナミックでローカライズされている必要がある
  • メーター制ビデオオンデマンドで新規マーケットを引き込みながら、コアのファンベースを維持する
  • OTTプロバイダーは補完的な戦略を必要としている
  • 人工知能とデジタルイノベーションはファンを24時間つかむための鍵である
  • 顧客離れ防止はサブスクリプションファンの獲得と同じくらい重要だ

MPP GlobalはユヴェントスFCのような人気スポーツクラブにファン関係管理サービスを提供し、ライブとオンデマンドの両方のコンテンツでOTTのサブスクリプションや課金サービスを成功させています。弊社は独特なファンエクスペリエンス、ロイヤリティ、エンゲージメントを構築し、断片化したファンベース全体で継続的な増収を実現することを専門にしています。

ファンは限定コンテンツと複数のデバイスでシームレスに利用できるサブスクリプションサービスを好むという事実は、随分前から認知されていました。今、スポーツ組織や放送権保持者はどのようにすれば、動画サービスを利用して経常収益を伸ばしていけるでしょうか?

OTTの今後の傾向についてMPP Global独自の分析をご紹介します…

グローバル放送局のように考える

スポーツ放送権保持者は独自のOTTサービスを始動する際、独立した消費者直販型OTTサービスを提供する世界規模の放送局を見本にするといいでしょう。現在のファンベースと世界中のスポーツファンを魅了し続けるために、OTTサブスクリプションモデルはダイナミックローカライズされている必要があります。

近年、世代ごとの視聴傾向が劇的に変わり、様々なデバイスでコンテンツを視聴できることが不可欠になっています。平均的な視聴者は4年前に比べてモバイルコンテンツを4時間以上長く視聴している一方、従来のテレビでの視聴時間は1週間あたり2.5時間減っています。

さらに、2019年までにOTTの新規潜在サブスクライバーは米国の18歳から40歳において3億3220万人に達すると予想されています(収益$180億相当、2011年から800%上昇)。[2]

ユヴェントスFC – スポーツクラブにおけるグローバルOTTサービスの可能性

ユヴェントスFCのOTTサービス、Juventus Passは始動以来、選手やスタッフの限定インタビュー、イタリアリーグのセリエAやUEFAリーグなどの試合の完全再放送、舞台裏などをファンに提供してきました。これは消費者直販型の新しい収益源であり、同クラブのファンベースを大幅に広げ、世界中のファンを魅了する助けとなりました。

コアのファンベースを維持する

キアラは長年にわたり地元のサッカーチームを応援してきたファンを代表しています。プレミアリーグのリバプールFCは郵便番号がL4の地元ファンにチケットの優先購入権を与えていますが、このような戦略はヨーロッパの他のクラブにとっても参考になるでしょう。こうしたプログラムは地元のサポートと観光客のファンベースのバランスを制御するのに役立ちます。

地元ファンはOTTサービスの月間サブスクリプションにより多くの料金を支払う気持ちがある可能性が高いため、この事例はローカライズの重要性をよく示しています。ダイナミックなサブスクリプションモデルを使用すれば、キアラと似たデジタルフィンガープリントの顧客の購入傾向は、ウェブサイトのデータウォールで見つかるオファーに反映されます。

メーター制ビデオオンデマンド(MVOD)で新規マーケットを引きつける

MVODを利用することで、新規マーケットのファンを引きつけ、お気に入りのスポーツクラブのオンライン動画に魅了させることができます。トライアルや無料動画を提供することで、新規マーケットのファンは個人情報の提供と引き換えに利用登録する可能性があります。スポーツクラブ側はファンとの明確な価値交換関係を築き、ファンは生涯価値を得られ、OTTプロバイダーはデジタルフィンガープリントでファンファン層の把握ができるため、これはすべての関係者にとって有益な手法です。

例えば、インドネシアにいるユヴェントスFCのファンは、自由に使える収入があまりないかもしれませんが、はじめは3ヶ月の無料トライアルに興味を持ち、その後も英国よりも安価な月間サブスクリプション価格なら引きつけられるかもしれません。

特に生活費に対するチケット料金が2011年以来2倍上昇し、不満を持った一部のファンは高過ぎて買えないと感じているため、スポーツOTTは「手の届く贅沢」と思われています。

補完的な戦略とクロスセリング

ASローマの戦略のように、よく実践されている国際的な戦略には、クロスセリングの無限の可能性があります。イーサンは新規マーケットでファンベースを確立するために国際試合のツアーがいかに重要かを示しました。

国外のファンはオンラインで試合を観戦し、クラブのグッズなどを購入できるため、ファンの生涯価値が蓄積されていきます。この手法は、単一の一元化されたファンページと単一のログイン機能によって実現されたクロスセリングの良い例です。一元化されたページとログインはスポーツクラブの増収源となる個別の関連商品全体に活用できます。iTunesのように、クラブは単一のIDを取得して支払いアカウントにリンクさせ、ファンがサイト上をシームレスに移動してコンテンツ、商品、サービスを簡単に購入できるようにするべきです。

人工知能

ダラス・マーベリックスのオーナーであるマーク・キューバンは最近のインタビューで、「スポーツの分析は過大評価されていて、人工知能(AI)とその派生物は過小評価されている」と話しました。[3] AIとデジタルイノベーションはファンを24時間365日魅了するための鍵となります。その理由として、60%の人がデジタルの分野で革新的な企業で買い物をしたいと述べています。[4]

OTTプロバイダーは新しいフォーマットを模索してきました。例えば、アーセナルFCはプレミアリーグのクラブで初めてAmazon Alexaスキルを採用し、英国と米国のファンが試合のライブと試合後の分析をストリーム配信で利用できるようにしました。

また、ファンデータの分析はパーソナライズに不可欠で、この情報を利用してファンの生涯価値を高められます。顧客を引きつけてリテンションを最大化するためにパーソナライズされたマーケティングキャンペーンとキャンセルフローには、人気のプレイヤーのサイングッズや無料トライアルを購買力に応じて含めることもできます。

顧客離れ対策

顧客離れから収益を保護することは、シーズンチケット、クラブのメンバーシップ、プレミアムコンテンツ、クラブ固有のOTTサービスなどにおいてスポーツ組織が直面する課題です。

サブスクリプションの収益を保護するには機械学習が重要になります。eSuiteのリテンション&乗り換え防止モジュールは顧客離れの予測アルゴリズムを生成し、90%以上の精度で翌月に動きのありそうな顧客を予測し、マーケティングチームが対象の顧客を引きつけてサブスクリプションを保持できるように対処するチャンスを与えます。

スポーツOTTプロバイダーはこうした分析をもとに対応を判断して、オファーやインセンティブを提供することで顧客離れを防げられます。MPP Globalのクライアントには、キャンセル数を70%も削減できた企業や、顧客リテンションを増加させて最終的な収益が年間£600万以上に達した企業もあります。

結論

グローバル放送局の目線で考えてみると、ローカライズを可能にし、多様なマーケットに賢く売り込むダイナミックなOTTサブスクリプション戦略の重要性が浮かび上がってきます。

一部のマーケットではOTTサービスに支払うインセンティブを増やす必要があるかもしれませんし、MVODを使ってこれらのマーケットを活気づけるなど、世界的な基準での同等の資産に対して異なるビジネスルールを適用します。

しかし、海外のファンを引きつけることは成功に不可欠である一方、ロイヤリティプログラムやリワードプログラムで長期的なファンベースも大切にする必要があります。リバプールFCは最近、ファン連絡係を設けてファンのグループと直接関わって地元の人が感じている問題を理解しようとしています。

ファン層を理解し、クラブの全関連商品を網羅した単一の一元化されたファンビューとシングルログインを作成することで、スポーツコンテンツオーナーは補完的な戦略とクロスセリングの利益を大幅に伸ばせます。

eSuiteなどのOTTプロバイダーのサブスクリプションを利用することで、負荷を減らし、終始ファンのライフサイクルを完全管理できます。

弊社のスポーツサブスクリプションのスペシャリストにお問い合わせいただければ 、ファンのエンゲージメントの管理および向上のための戦略についてご相談を伺います。

参照

  1. エリクソンのコンシューマーラボの2016年のレポート
  2. www.deltatre.com/2016/07/ott-new-channel-market-sport-tv-broadcasters
  3. www.futuresport.co/artificial-intelligence-ai-and-the-247-fan-experience
  4. www.internetretailing.net/2017/08/digitally-obsessed-consumers-likely-shop-digitally-advanced-retailers